脊椎後弯症とは(症状・原因・治療)
背中の痛みを引き起こす可能性のある病気の一つに「脊椎後弯症(せきついこうわんしょう)」があります。
ここでは背中の痛みとの関係を交えながら解説します。
1.脊椎後弯症が疑われる症状
背中の痛みのほかに、以下のような特徴や症状が見られる場合、脊椎後弯症が発症している可能性があります。
- 背中が丸まっている(猫背がひどい)
脊椎後弯症は、軽度では何の症状も表れない場合が多く、背中の痛みが続くことがある程度です。
重度になると、腰が強く傷んだり、神経の障害を生じる場合があります。
2.脊椎後弯症とは 〜 原因と特徴
背骨は硬い骨(椎骨)と水分を含んだ柔らかい組織(椎間板)が交互に重なってできています。背骨全体を「脊柱(せきちゅう)」と呼び、一つ一つの骨を指す場合に「脊椎(せきつい)」と呼ばれます。
背骨は、正常な状態では体の横から見た時に、"ゆるやかなS時カーブ"を描いていますが、 背中側のカーブの角度が異常に大きくなっている状態を「脊椎後弯症」といいます。「円背(えんぱい)」、「猫背(ねこぜ)」、「亀背(きはい)」とも呼ばれます。
逆に、前方への弯曲が異常に大きい状態を「脊椎前弯症」といいます。
脊椎後弯症の原因として考えられるものには、普段の姿勢によるもの(機能的後湾)と、病気・疾病によるもの(構築性後弯)があります。後者は更に病気や症状ごとに分けられ、固有の名称がついているものもあります。
- 姿勢の悪さ
背中を丸めた猫背の姿勢が習慣化することで背骨が大きく曲がることがあります。
事務員などのデスクワークに従事する人や、手作業での田植え仕事をする人などにもよく見られます。 - 生まれつき(先天性)
生まれつき背骨の変形が見られる場合もあり、「先天性脊柱後弯症」と呼ばれます。成長にともなって進行するものがあります。 - からだの成長
成長に伴って骨の変形がみられるもので、「青年性後弯症」といいます。成長期は骨の発育が早いため、特に異常が発生しやすくなります。 - 加齢
自然な老化現象の一つとして、歳をとるにつれて骨はもろくなります。加齢による骨の摩耗・変形、骨粗鬆症(こつそそうしょう)などが原因で背中が曲がるものを「老人性後弯症」といいます。特に高齢の老人に腰や背中の曲がった人が見られるのはこのためです。 - 脊椎の病気や骨折
背骨・脊椎部分の病気や骨折によって後弯が見られるケースです。また、過去に脊椎関連の病気や怪我をしたことがある人は後遺症として表れる場合もあります。
<後弯の症状が見られる病気>
化膿性脊椎炎、脊椎カリエス、脊髄髄膜瘤、圧迫骨折、骨粗鬆症、強直性脊椎炎、骨軟骨異形成症、骨形成不全症、軟骨無形成症、腫瘍など
3.診断・治療・予防
脊椎後弯症は痛みなどの症状にとぼしいため、診断は触診やX線撮影による検査が主となります。
治療法は原因によって異なります。
姿勢の悪さからくる軽度のものであれば、姿勢の改善指導を行い、定期的に診断しながら様子を見ます。また、運動療法や、サポーターやコルセットで姿勢を固定したり、負荷を軽減する装具療法も有効です。これらは原因に関わらず軽度のものに対して有効です。
こうした治療法では効果がない、曲がり具合が大きい、骨折を伴っている、などの重度のものに対しては手術を行います。手術では曲がっている部分を矯正し固定します。
他の病気が原因となっている場合には、その病気の治療を行います。
【関連項目】
脊椎後弯症や前弯症は、背骨が左右にゆがむ脊椎側湾症も加わって複雑に曲がったりねじれた状態になることがよくあります。こうなると治療も長く困難なものになってきますので、早期発見と早期治療が大切です。